コラム

今年の最低賃金、あなたの会社は大丈夫?──10月改定の前に確認したい3つのこと

毎年秋になると話題になる「最低賃金の引き上げ」。ニュースで金額を見て「また上がるのか」と、ため息をつく経営者の方もいらっしゃるかもしれません。最低賃金は例年10月に改定され、その金額のもとになる「引き上げ額の目安」は、毎年7月下旬に国から示されます。そのあと8月から9月にかけて、各都道府県が自分の地域の具体的な金額と発効日を決めていきます。つまり今の時期は、「うちの県はいくらになりそうか」が少しずつ見えてくるタイミングです。

改定は10月ですが、慌てて対応するのではなく、金額が固まってくる今のうちから準備しておくと、経営への影響をぐっと小さくできます。今回は、最低賃金の引き上げに向けて中小企業が押さえておきたいポイントを、できるだけやさしく整理してみます。

そもそも最低賃金とは、どう決まる?

最低賃金とは、「従業員に最低限これ以上は支払わなければならない」と法律で定められた時間あたりの賃金のことです。正社員だけでなく、パート・アルバイトを含むすべての働き手が対象で、地域ごとに金額が決まっています(地域別最低賃金)。

決まり方には毎年おおまかな流れがあります。添付の図解のように、①7月下旬に国(中央最低賃金審議会)が引き上げ額の「目安」を示し、②8月から9月にかけて各都道府県がその地域の金額と発効日を決定し、③10月ごろから順次発効する、という3つのステップです。ですから、8月のいまは「②の各県の金額が出そろっていく時期」にあたります。自社のある地域の発表を、少し気にかけておくとよいでしょう。

なお、2026年の目安額については、労使の意見に隔たりがあり、まだ最終決着していないと報じられています(2026年7月時点)。具体的な金額や発効日は地域によって異なり、これから確定していくため、最新の情報はお住まいの都道府県労働局や厚生労働省の発表でご確認ください

▲図解1:最低賃金が決まる年間の流れ(自作・出典なし)

まず確認したいのは「自社への影響」

金額が発表されたら、最初にやっておきたいのは、今いる従業員の時給が、新しい最低賃金を下回らないかの確認です。とくに気をつけたいのが、パート・アルバイトの方や、入社まもない従業員の時給です。月給制の正社員も、月給を時間あたりに換算すると意外とギリギリ、というケースがあります。

ここで下回る人がいると、改定日から自動的に「最低賃金割れ」となり、法律違反になってしまいます。誰の時給をいくら上げる必要があるのか、影響を受ける人数と金額を早めに洗い出しておけば、資金繰りの見通しも立てやすくなります。「気づいたら発効日を過ぎていた」ということがないよう、カレンダーに発効日を書き込んでおくのがおすすめです。

引き上げを「コスト増」だけで終わらせない

賃上げは人件費の増加につながりますが、それを和らげたり、前向きな投資に変えたりするための制度も用意されています。代表的なものが次の2つです。

一つは、業務改善助成金。従業員の時給を一定額以上引き上げ、あわせて生産性を高める設備投資(機械の導入や業務のIT化など)を行うと、その費用の一部が助成される制度です。令和8年度は、申請の受付や締切、対象となるコースなどが見直されているため、活用を考える場合は要件と期限を早めに確認しておくと安心です。

もう一つは、賃上げ促進税制。従業員に支払う給与を前年より増やした中小企業が、その増加分の一定割合を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける制度です。令和8年度の税制改正で、中小企業向けは引き続き利用できる方向とされています。赤字などですぐに使い切れない場合に、控除しきれなかった分を繰り越せる仕組みもあります。

こうした制度は、要件や金額、期限が毎年見直されます。「自社が使えるのか」「どの制度が有利か」は状況によって変わるため、詳しくは専門家にご相談ください。うまく組み合わせれば、賃上げを単なる負担ではなく、設備や仕組みを整えるきっかけに変えることもできます。

▲図解2:引き上げを支える2つの制度(自作・出典なし)

経営のパートナーとして、ひとこと

最低賃金の引き上げは、毎年やってくる「避けられない変化」です。だからこそ、その都度あわてるのではなく、金額が見えてくる今の時期に影響を見積もり、使える制度を検討しておくことが、経営を守る一番の近道になります。賃上げは、見方を変えれば「人に選ばれ、生産性を高める会社」への一歩でもあります。

自社の場合にどれだけ影響が出るのか、どの助成金や税制が使えるのかは、業種や規模、従業員の構成によって変わります。本コラムは一般的な考え方の整理にとどまりますので、具体的な試算や制度の活用については、詳しくは専門家にご相談ください。私たち税理士法人長谷川共同会計事務所は、人件費の見通しづくりから助成金・税制の活用、資金繰りの相談まで、経営者の皆さまが安心して前に進めるよう、パートナーとして一緒に整えてまいります。

「うちはどれくらい影響を受けるだろう」と少しでも気になった方は、どうぞお気軽にご相談ください。早めに見通しを立てておくだけで、秋の改定を落ち着いて迎えられます。初めての方のご相談も歓迎しています。まずはお問い合わせフォーム、またはお電話からお声がけください。

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