コラム

「まだ早い」がいちばんのリスク。家族が集まる秋に始めたい相続・事業承継の話

秋は、敬老の日やお彼岸など、家族が顔を合わせる機会が増える季節です。だからこそ、ふだんは切り出しにくい「相続」や「事業承継」の話を、そっと始めるのに向いた時期でもあります。「うちはまだ早い」「元気なうちに縁起でもない」と感じる方は多いのですが、実はこの「まだ早い」という先送りが、いちばんのリスクになりがちです。今回は、相続と事業承継の「入り口」を、できるだけやさしく整理してみます。

「まだ早い」が、いちばんのリスク

相続や事業承継で難しいのは、いざそのときが来てからでは、選べる道がぐっと狭くなってしまうことです。財産の分け方も、会社の引き継ぎ方も、多くは「本人が元気で、家族が落ち着いて話せるうち」にしか、じっくり決められません。

準備がないまま相続を迎えると、残された家族が限られた時間の中で重い判断を迫られたり、想いが伝わらずに揉めてしまったりすることがあります。逆に、早めに少しずつ話し合っておけば、選択肢は広く、対策にかけられる時間も長くなります。相続や事業承継は「時間を味方につけられるかどうか」で、結果が大きく変わるのです。

まず知っておきたい、2つの入り口

「相続」と「事業承継」は、似ているようで少し違います。添付の図解のように、2つの入り口として整理すると分かりやすいでしょう。

相続は、個人の財産(預貯金・不動産・自社株など)を、次の世代へ引き継ぐことです。「誰が何を受け取るか」「家族が円満に分けられるか」「相続税の負担にどう備えるか」が主なテーマになります。一方の事業承継は、会社や事業そのものを次へ引き継ぐことです。「後継者は誰か」「会社の株式をどう引き継ぐか」「経営のバトンをいつ、どう渡すか」がポイントになります。

会社を経営している方の場合、この2つは深く結びついています。自社株は「財産(相続)」であると同時に「経営権(事業承継)」でもあるため、両面から考えておく必要があるのです。

▲図解1:相続と事業承継 2つの入り口(自作・出典なし)

秋の集まりで、話しておきたいこと

いきなり細かい話を決める必要はありません。まずは、次の3つを家族でゆるやかに共有するだけでも、大きな一歩です。

一つ目は、財産のおおまかな棚卸し。「何が、どこに、どれくらいあるか」を、ざっくりでよいので把握しておきます。二つ目は、引き継ぎたい想い。誰に何を、どんな形で残したいか、本人の希望を言葉にしておきます。三つ目は、会社があれば後継者の有無と意向。継ぐ人がいるのか、本人にその気持ちがあるのかを、早めに確認しておきます。

これらは、正解を出す場ではなく「話し始める」ことに意味があります。家族が集まる秋は、その最初のきっかけにちょうどよい時期です。

▲図解2:秋の集まりで話しておきたい3つのこと(自作・出典なし)

早く動くほど、打てる手が増える

早めに準備を始めると、使える対策の幅も広がります。たとえば、時間をかけて少しずつ財産を引き継ぐ方法や、会社の株式を計画的に承継していく方法など、「時間がある人だけが選べる」手立てがいくつもあります。

なお、生前の贈与については、相続税の計算に持ち戻される期間が段階的に延ばされているなど、ルールも少しずつ変わっています。こうした制度は年によって変わり、有利・不利は一人ひとりの事情で大きく異なります。具体的な進め方や税金の話は、詳しくは専門家にご相談ください。

よくある3つの誤解

相続や事業承継を先送りしてしまう背景には、いくつかの「思い込み」があります。たとえば「うちは財産が少ないから関係ない」。実際には、揉めごとは財産の多い少ないと関係なく起こります。分けにくい自宅が一つだけ、というケースはむしろ難しくなりがちです。「遺言はお金持ちがするもの」という誤解もよく聞きますが、想いを一枚残しておくだけで、残された家族の負担や迷いは大きく減ります。そして「まだ元気だから急がない」――これがいちばん多い誤解ですが、元気なうちにしか話せないことこそ、早めに始める価値があります。

経営のパートナーとして、ひとこと

相続や事業承継は、お金の手続きである以上に、「家族や会社の想いをどう引き継ぐか」という、とても大切なテーマです。だからこそ、あわてて決めるのではなく、元気なうちに、時間をかけて向き合っておくことが、いちばんの備えになります。

何から手をつければよいか、自社株や不動産をどう考えればよいかは、家族構成や事業の状況によって変わります。本コラムは入り口の整理にとどまりますので、具体的な進め方については、詳しくは専門家にご相談ください。私たち税理士法人長谷川共同会計事務所は、相続・事業承継を強みのひとつとしており、財産の棚卸しから、ご家族の想いに沿った引き継ぎの設計まで、経営者とご家族に寄り添って一緒に考えてまいります。

「そろそろ、うちも考えたほうがいいかも」と少しでも感じた方は、どうぞお気軽にご相談ください。早いうちに一度整理しておくだけで、ご家族の安心は大きく変わります。初めての方のご相談も歓迎しています。まずはお問い合わせフォーム、またはお電話からお声がけください。

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